家族学習会・公開講座・交流研修会・SST研修会

1.家族学習会・公開講座

当会は、川崎市地域精神保健福祉対策促進事業の委託により、次に示す各種学習・研修会等を実施しています。これらは、当事者を支える家族を元気づける知識・ノーハウを提供すると共に、家族や地域の方が精神障害についての正しい理解が得られることを目的としております。そのほか、関係団体の講演会もあります。
多くの家族の方や地域の方に有益な会の開催を心掛け、大勢の方に参加していただけるよう趣向を凝らしております。

1.家族学習会

家族学習会は主として会員家族向けの学習会です。原則として、地域福祉施設ちどりで開催しています。
平成30年度は、10月6日に地域福祉施設ちどりを会場に、「日頃の悩みや疑問を思い切りぶつけてみましょう~成年後見制度を参考にしながら~」というテーマで、神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会成年後見センターの井口正幸氏に、成年後見制度の概要とその事例についてお話しいただき、その後、質疑応答を行いました。
成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどで判断能力が不十分な方の権利を擁護し、支援するための民法上の制度です。
既に判断能力が低下している方が利用する法定後見制度と将来の判断能力の低下に備えてあらかじめ後見人や支援内容などを決めておく任意後見制度があります。
後見人の役割として、財産管理、生活費等の「金銭管理」と障害者制度のサービス契約、自宅の保全等の「身上監護」があります。
後見人として、専門資格を有する人・団体の他に、市民後見人がいます。主に身上監護面での支援が必要で、多額の資産を有せず、相続関係等のトラブルが無く、身近で支援する家族や親族がいない方が利用できる制度です。
障がい当事者を抱えた家族が心得て、準備することとして、①経済面の対応:当事者の将来の収入状況(給与、年金など)と支出状況(住居費、生活費、健康保険料etc.)の把握および資産の確保・管理(この一助として成年後見制の活用)、②住まいの確保、③日常生活のフォロー(困ったときや悩んだ時に相談できる場所の確保や記録の作成等)が必要です。
記録ノートとして「親心の記録~支援者の方々へ~日本相続知財センター」があります。
井口氏のお話しの後、質疑応答がありました。
「親はあれこれ考えているが本人の同意が得られず実行できない」:名案はないが、地道に親子間の信頼関係を築くことです。また、話ができるワーカー、支援センターの職員、訪問看護師等との出会いを作る努力が大事です。
「身内に頼めない、本人が身内を避ける、金遣いが荒い」:社協の日常生活自立支援事業を活用して、効率的なお金の使い方をサポートしていただくのはいかがでしょうか。
親がまず取り組めるのは、「家族が準備しておく」こと辺りからまとめていくのはどうでしょうか。例会での情報交換が一番の参考になるかもしれません。不安に思い、困ったら専門機関を訪ね相談するということです。

さらに、平成29年度も家族学習会に替えて、10月13日午前、ちどりにて、川崎市精神保健福祉センター竹島正所長等との第3回意見交換会が「訪問(ひきこもり)支援・家族支援を中心に」をテーマに行われました。市側から7名、各単会から22名が参加しました。懇談では、各単会で行われた実態調査アンケート結果が配られ、訪問支援、家族支援で共通しているのは、第三者に会うことを拒否し、一歩が踏み出せないで家庭内にとどまっているケースへの訪問・支援であると強調されました。続いて、通院し薬も飲んでいるが自宅に引きこもり他人に合うことを拒否しているために、第三者とのかかわりが持てず親亡きあとの相談もすすまない。本人が拒否している場合は行政の援助が入らず結果的には支援につながらず病状も良くならない。家族関係の改善も重要だが、家族関係だけでは閉鎖的で発展性がないので、本人との信頼関係をつくる第三者の訪問支援の必要性などが強調されました。こうした、家族が抱える悩みや要望を受け、竹島所長からも、家族だけの閉鎖的な関係になっているケースが残されている。第三者の介入があれば、家族にも当事者にも好循環が生まれる可能性があるのが、そうなっていない実態が見えてきた。今後の課題が何かを考える上で参考になるなどの指摘がありました。


2.公開講座

公開講座は、当事者や会員をはじめ地域の住民の方を対象にして、差別・偏見をなくすための啓発活動などをテーマに開催しています。会場は、川崎市総合福祉センター(エポックなかはら)等です。

平成29年度は、9月11日(月)に、「ストレス社会における精神疾患の治療とケアについて考える」をテーマに、帝京大学医学部付属溝の口病院精神科科長・教授 張 賢徳 氏に講演をお願いしました。会場は、川崎市総合福祉センター(エポックなかはら7F大会議室。精神疾患がどうして発症するのかという理由はまだまだ分からないことが多いのですが外的な要因としてのストレスと、内的な要因としての脆弱性が相まって精神疾患が発症するという考え方です。現在社会ではストレスの影響が大きいと思われるうつ病圏の病気への内容ということで公開講座として開催いたしました。家族会会員はもとより、支援者、一般の人々と広く87名の参加がありました。治療は薬が大事であるがそれだけではないという事など具体的に、大変有意義な学習会となりました。「広報チラシ」を参照

なお、ここ数年間の実施状況は以下のとおり(家族学習会・公開講座一覧表)です。

家族学習会・公開講座一覧表:

年度 項目 年月日 演題 講師 所属
30年度  家族学習会 平成30年10月6日 成年後見制度を参考にしながら 井口正幸氏  社会福祉士、精神保健福祉士
29年度 公開講座 平成29年9月11日 ストレス社会における精神疾患の治療とケアについて考える 張 賢徳氏 帝京大学医学部付属溝の口病院
精神科 科長
家族学習会 平成29年11月4日 親あるうちに「子の自立、親の自立」自立とは? 品川 博二氏 日本ケア・カウンセリング協会
代表理事
第3回意見交換会 平成29年10月13日 第1回、第2回意見交換会を踏まえて 竹島 正氏ほか 川崎市精神保健福祉センター等
28
年度
家族学習会 平成28年9月3日 障害年金手続きで家族のできること 小山志郎氏 社会保険労務士
公開講座 平成29年3月8日 本人と家族を支える家族支援 伊藤千尋氏 淑徳大学総合社会
第1回
意見交換会
平成28年9月13日 訪問支援について 竹島 正氏
ほか
川崎市精神保健福祉センター等
第2回
意見交換会
平成29年1月24日 ひきこもり支援について 竹島 正氏
ほか
川崎市精神保健福祉センター等
27年度 第1回
家族学習会
平成27年10月3日 当事者を抱えた家族が元気になるために 長見秀和氏 湘南精神保健福祉士
第2回
家族学習会
平成28年2月6日 私たちの町にもACTを? 岡崎公彦氏 岡崎クリニック院長
公開講座 平成28年2月25日 元気回復行動プランWRAP 増川ねてる氏 はるえ野センター長
26 年度 第1回家族学習会 平成26年7月5日 公的介護保険の利用について 宮森優子氏
第2回家族学習会 平成27 年1月24日(土) 精神障がい者の入院、退院後の支援、服薬について 日向清史 氏 大和病院地域連携・医療相談室長
公開講座 平成27 年2月4日(水) 精神障がい者に対する差別・偏見をなくすために 池原毅和 氏 東京アドヴォカシー法律事務所
25年度 第1回 家族学習会 平成25年7月6日(土) 社会資源を活用されていますか? 明田久美子氏 川崎市健康福祉センター 担当課長
第2回 家族学習会 平成25年1月5日(土) 家族のために当事者研究 宝田友子氏 アシリアの会代表
第3回 家族学習会 平成26年1月29日(水) 相談支援事業の再編に ついての理解を深めるために 川上賢太氏 川崎市健康福祉局 障害計画課
高松 信氏 いまここ相談 支援専門員
小泉朋子氏 川崎市健康福祉局 精神保健課係長
公開講座 平成26年2月25日(火) 法律改正後の強制入院制度 精神障害を有する人と家族支援に向けて 白石弘巳氏 東洋大学ライフ デザイン学部長

2.交流研修会

家族学習会と同様に、川崎市からの委託により実施しております。当事者やその家族を対象とするだけではなく、ボランティアや一般市民にも精神保健福祉施策の重要性を理解していただくための研修会です。誰もが安心して暮らせる地域社会のあり方を学ぶことを通して、当事者・家族と地域の人との交流を促進する目的で行っています。
平成30年度は、30年12月13日にエポックなかはらにおいて、さいたま市のもくせい家族会副会長岡田久実子氏をお招きして「この地域で自分らしく暮らす~家族への支援策を求めて~」と題して開催しました。 岡田氏は、埼玉県精神障害者家族会連絡会会長、みんなね っと副理事長、こんぼ理事他の要職も担っておられます。
岡田さんのお話しは、統合失調症と精神障がいをもつ人の親として、「住み慣れた地域で生きてきた体験」と「住み慣れた地域を耕すことを考えてきた体験」でした。体験をとおして、統合失調症を患っても大丈夫な社会づくりを目標として活動して来られたとのことです。
娘さんが統合失調症を発症され、親としての不安や戸惑いから高EEといわれる状態になりましたが、家族会との出会いが一つの転機になりました。研修会などで学び、リカバリーとの出会い等で、少しずつ不安が払拭し、娘さんの精神障がいを隠さずに、地域で堂々と生きて行こうと決めました。また、電話相談から地域の現状を知り、社会の問題としての視点を持つようになりました。
医療、福祉、行政、議会の関係者を集い、ACTを勉強し、志向しましたが、ハードルが高く、現在は、「さいたま市メンタルヘルスネットワーク」を立ち上げて活動しています。この活動の基本にあるのは「家族会活動」です。同時期に、訪問型医療・支援を始動しました。
今、新たなつながりとして、訪問看護ステーションスタッフが主導する「精神看護・精神地域ケア事例検討会」に参加し、政策提言への動きも生まれています。
その結果、精神障がい者への「訪問支援」「家族支援」を広げることを市の障害者支援計画に盛り込まれるまでにいたりました。
最後に、当事者の活躍として、精神の病気や障害があっても「力」が発揮できる、精神の病気や障害が経験として役立つ、地域の中に生活者としての姿が見えることへの期待を示されました。

ここ数年の実施状況は以下のとおり(交流研修会一覧)です。

交流研修会一覧表

年度 年月日 演題 講師 所属
29年度 平成30年2月7日 「差別・偏見をなくし住みよい社会を」
~当事者・家族も楽しく暮らせる町に~
池原毅和氏 東京アドヴォカシー
法律事務所
28年度 平成28年12月22日 親亡き後を見据えた準備 浜田裕也氏 社会保険労務士
27年度 平成27年12月9日 家族のできること 増野 肇 氏 ルーテル学院大学名誉教授
26年度 平成26年12月9日 より良い精神医療を求めて 上森得男 氏 高橋美久 氏 ひだクリニック
25年度 平成25年12月9日 統合失調症の最近情報 臨床家がなぜ研究するのか 糸川昌成氏 東京都医学総合研究所
統合失調症・うつ病
プロジェクトリーダー

 

3.SST研修会

会員を対象とした研修会です。

SSTとは・・・

対人関係を上手く行えるようにしたり、新しい対処の方法を習得したりすることによって社会生活技能を高めることを目的に学習するものです。ソーシャルスキルトレーニング(social skills training)の頭文字をとってSSTと呼ばれ、病院や学校などでも取り組まれています。
あやめ会では、このSSTの第一人者である高森信子先生の指導の下で、当事者との接し方や話し方等実践を交えて勉強をしてきました。とくに新しい参加者で当事者の対応でお困りの方には、高森先生から個別に当事者の日常生活訓練や過ごし方などを指導していただけます。父親の参加も徐々に増えております。奇数月の第4木曜日にSST講座を開催しています。

平成29年度の開催と参加者数を以下に示します(平成29年度SST研修会開催実績)。

平成29年度SST研修会開催実績

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 合計
月日 5月25日 7月27日 9月14日 11月30日 1月25日 3月22日 6回
参加者数 14名 15名 11名 18名 19名 22名 99名

 

4.関係団体開催の講演会等

〔じんかれんの講演会等〕
 ・じんかれん第45回精神保健福祉「県民の集い」IN えびな
  日時:平成30年11月10日(土)
   会場:海老名市文化会館
   講演会 『当事者ひとりひとりが自信をもって生きてゆくには』~オープンダイヤローグによるリカバリーをめざして~
   講師:森川すいめい氏(精神科医)
 ・じんかれん第44回 精神保健福祉「県民の集い」 IN さがみはら
   日時:29年11月21日(火)
   会場:相模原南市民ホール
   記念講演 「ひらく!~わたしたちは、どう繋がり、どう変わればよいか~」
   講師:青木聖久氏(日本福祉大学教授)
   演題:「生きずらさを持つ本人も家族も誰もが安心して暮らせる社会」
〔みんなねっとの講演会等〕
 ・みんなねっと兵庫大会
   日時:30年11月26日(月)、27日(火)
   会場:ポートピアホール、神戸国際会議場
   大会テーマ: 精神疾患の本人と家族の明日を切り拓くために
   基調講演:「精神疾患を正しく理解するための教育の必要性について」~何故日本では、精神疾患の教育が進まないのか、世界はどうか~
   講師:山田浩雅〔愛知県立大学準教授〕
   特別講演:『最新の精神疾患の薬と対話による治療について』
   講師:糸川昌成〔東京都医学総合研究所病院等連携研究センター長〕
 ・2018みんなねっと関東ブロック大会in 栃木
   日時:平成30年10月26日(金)
   会場:宇都宮市文化会館小ホール
   テーマ:「豊かな明日を築くために」~家族と当事者の自立に向けて~
   基調講演:「脳と心」~見えるものと見えないものの意味~
   講師:糸川昌成氏(東京都医学総合研究所副所長)
 ・みんなねっとフォーラム 2017
   日時:30年3月2日(金)
   会場:帝京平成大学 沖永記念ホール
   講演 「地域で共に暮らすー愛南町の取り組みから」
   講師:長野敏宏氏 (愛知県公益財団法人 正光会御荘診療所所長・精神科医)
 ・2017みんなねっと関東ブロック大会in 埼玉
   日時:29年11月2日(木)
   会場:大宮ソニックホール
   テーマ:「家族の力で地域を変える!」~精神障害があっても暮らせる地域をめざして~
   講師:伊藤順一郎氏(しっぽふぁーれ院長)
   演題「地域医療福祉と家族会の役割」
 ・みんなねっとおかやま大会
   日時:29年10月19日(木)20日(金)
   会場:倉敷市芸文館
   大会テーマ: みんなで一緒にやろう!~地域を変える「特区」づくり~
   基調講演:「当事者中心の地域支援再考」
   講師:元こらーる岡山診療所所長 山本正知

5.他団体等に対する当会の講演等

29年11月14日に日本社会事業大学社会福祉学部精神保健福祉学分野での精神保健福祉援助実習の中で、同大学からの要請により「家族が期待する精神保健福祉士(PSW)の業務・役割」について、当会理事長山本泰彦が講義を行いました。
その内容は、「家族会(あやめ会)活動の紹介」をした後、「家族会から見た精神障がい分野が抱える今日的課題」、「家族会(単会)からPSWを志す方への言葉」を述べ、「これからのPSWへの期待」で締めくくりました。
PSW:精神保健福祉士